ボルツマンメダルは、統計物理学の顕著な成果を生み出した物理学者に対して、3年に1度開催される統計物理国際会議にて授与されます。蔵本由紀氏(1985年から2004年まで理学研究科教授)の受賞は、日本人では、久保亮五氏(1977)、川崎恭治氏(2001) に次いで3人目です。蔵本由紀氏は、非平衡系でみられる多様で複雑な現象に対して普遍的で簡単な記述を可能にする方法論を開拓しました。特に、スパイラルパタンを示す複素係数ギンツブルグ=ランダウ方程式の導出と解析、時空カオスを示すもっとも簡単な偏微分方程式(蔵本=シバシンスキー方程式)の導出と解析、集団同期という新しい協同現象を示すもっとも簡単な模型(蔵本模型)の提示と解析は、非平衡科学の風景を一変させた結果として認められています。